マウスも人間と同じように、次に食べるものの好き嫌いに応じて、その前に食べるものの量を計画的に調節できることがわかった。東京大学大学院農学生命科学研究科の喜田聡教授らによる研究グループが発見した。
本研究グループは、人が日常するような計画的な食行動が、マウスでも観察されるかを調べたという。マウスに通常餌を与えてから好きな食物(チーズ、スイートチョコレート)あるいは苦手な食物(ビターチョコレート)を与えることを繰り返すと、チーズあるいはスイートチョコレートが与えられる場合には、その前の通常餌の摂食量が減っていき、逆に、ビターチョコレートを与えられる場合には通常餌の摂食量が増えていくことがわかった。つまり、マウスも我々が日常的におこなっているように、その次に何を食べるかを計算しながら、計画的に食事することが明らかとなった。
我々人間は、「別腹食い」、「ストレス食い」、「やけ食い」など、本来生存には必要ではない不思議な食行動を示す。このような食行動は、生命維持の必要性に従って食行動が制御される「代謝制御」とは別に、それぞれの食物に対する嗜好性に応じて食行動が制御される「認知制御」の一つだ。
今回マウスでも、認知制御の一端が再現されたと言うことができるだろう。今後の研究継続により、後に食べる物を考慮して食事するといったヒトの計画的食行動のメカニズム解明に前進することが期待される。また、この計画的食行動の破綻が、過食症や拒食症などの摂食障害の一因になると考えられるため、今回の発見は摂食障害の理解に繋がることも期待される。