東京農工大学大学院と産業技術総合研究所の研究チームは、自然由来のヒ素が含まれる東京低地の地下に地盤ボーリング調査を行い、ヒ素が土壌溶出量基準を超過して溶出することや、ヒ素がラズベリー様の黄鉄鉱(フランボイダルパイライト)に局在していることを明らかにした。

 東京低地の地盤を形成する沖積層(有楽町層)には、自然由来のヒ素が含まれることが知られていた。しかし、有楽町層中のヒ素がどのような状態(鉱物など)で存在しているのかは確認されておらず、有楽町層の土壌からヒ素が溶出する仕組みは不明だった。そこで、研究グループは、有楽町層が分布する東京都と千葉県内の東京湾岸低地で地盤ボーリング調査を実施し、地表から地下15mまでの土壌中のヒ素の濃度を分析した。

 その結果、深さによっては、有楽町層からヒ素が土壌溶出量基準を超えて溶出することを確認。SPring-8の放射光を光源とするX線吸収分光法を用いて得られた土壌を分析したところ、有楽町層でもラズベリー様の黄鉄鉱(フランボイダルパイライト)の表面にヒ素が蓄積していることが確認された。

 有楽町層中のヒ素は、鶏冠石や硫砒鉄鉱に類似した複数の化学形態を有していることが、この分析によって明らかになった。この結果により、フランボイダルパイライトを多く含む有楽町層の土壌を掘削した際に、地上で大気に曝露されて酸化が進むと、ヒ素が溶出しやすくなることが示された。

 今回の研究成果は、有楽町層と類似の性質を有する沖積層において、大規模なインフラ工事などで大量に発生する建設発生土の適切な措置や処分のための技術開発、ならびに持続可能な汚染土壌の管理に活用されることが期待されるとしている。

論文情報:【Journal of Hazardous Materials】Unveiling the potential mobility and geochemical speciation of geogenic arsenic in the deep subsurface soil of the Tokyo metropolitan area

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