東北大学、北陸先端科学技術大学院大学、大阪大学らは、混合ガス中から標的となるガスを識別して検出する新しい「ガス検知選択性」の手法を提案した。
現在、半導体式ガスセンサーでは、ガスの吸着に伴う物質の抵抗変化を利用したガス識別手法が広く使用されている。しかし、混合ガス中では同種ガス同士の干渉が起きるため、ガスの種類を詳細に判別できない可能性がある。
そこで、本研究チームは、同種ガスに対して異常なセンシング反転挙動を示す物質に注目した。単斜晶二酸化バナジウム(M1相)は、同一温度においてアンモニアに対しては電気抵抗が増加(上向き応答挙動)するが、他の同種ガスに対しては電気抵抗が減少(下向き応答挙動)するという。この真逆のセンシング挙動に基づいて、混合ガス中からアンモニアの存在を判定できるとした。
研究チームは、第一原理計算の結果、二酸化バナジウムがアンモニアを吸着すると「ショットキー接合」が形成され、二酸化バナジウムと電極間の接触方式が変化することで電気抵抗が増加することを明らかにした。この計算に基づき、センシング挙動を評価する「ガス検知選択性係数」を提案した。
これらを応用して、排便と排尿を同時に識別するおむつセンサーを発明し、特許出願した。従来のおむつセンサーが1種類の排泄物しか検出できなかったのに対し、新しいおむつセンサーは、便と尿に由来するガス成分に対する二酸化バナジウムの異なるガス応答挙動を利用して、便と尿を瞬時に判別できることに加え、透明性と柔軟性にも優れるという。おむつ交換の必要性を知らせるウェアラブルデバイスとして、要介護者の日常的なケアに大きな恩恵をもたらすとしている。
このように、異常なセンシング挙動を応用した「ガス検知選択性」の新しい定義は、より充実したガス検知材料の開発に役立つと期待される。
論文情報:【Advanced Materials】Novel Selectivity: Target of Gas Sensing Defined by Behavior