新型コロナウイルス感染症が流行していた2020年、低所得の高血圧患者に顕著な受診控えの傾向が出ていたことが、東北医科薬科大学と東北大学の調査で分かった。

 東北医科薬科大学は全国規模のインターネット調査である「日本におけるCOVID-19問題および社会全般に関する健康格差評価研究」のデータを用い、治療中と答えた高血圧患者2,832人を対象に世帯所得と定期受診控えの関連を調べた。低所得者は年収318.2万円未満としている。

 その結果、2020年に定期受診を控えた低所得者は19.6%に上った。これに対し、318.2万円以上の世帯所得があった患者の受診控えは8.8%にとどまっている。特に低所得者の受診控えは女性でその傾向が強く、コロナ禍で女性の家事や育児負担が増加したことが影響したとみている。

 2021年に入ると受診控えは大きく減り、世帯所得の影響も消失した。緊急事態宣言など社会活動の制限が高血圧患者の受診行動に大きな影響を与えていたことが明らかになっている。

 別の研究でも、2020年の治療中高血圧患者の血圧が上昇していたことが分かっており、研究グループは、公衆衛生上の緊急事態により社会活動が制限された際、効果的な経済的支援とともに、オンライン診療の推進など低所得層の医療アクセスを低下させない対策が必要としている。

論文情報:【Hypertension Research】Association between equivalized annual household income and regular medical visits for hypertensive patients since the COVID-19 outbreak

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