明治大学農学部の島田友裕准教授と日本電信電話株式会社の共同研究グループは、単一細胞(大腸菌)の全転写因子を対象として、土壌中の細菌が長期生存するために必要な遺伝子の包括的特定に、世界で初めて成功した。

 これまで、土壌中の微生物活動の制御は、土壌の物理的・化学的性質を変えることで行われてきた。しかし、微生物叢(びせいぶつそう)全体の量は変えられるが、任意の微生物種毎の増減はできなかった。例えば、亜酸化窒素(N2O)を変換する微生物のみを増やせないため、陸地からの温室効果ガス排出量の効果的低減は困難だった。

 今回の成果により、土壌中から排出される温室効果ガスの削減、土壌中の物質循環を最適化することによる化学肥料の使用量減少、過剰な窒素源の環境への流出量削減を通じた環境負荷の低減が期待される。

 温室効果ガスの一つとして考えられている二酸化炭素(CO2)の排出は、土壌を含む陸地からの排出が人間活動による排出の約12倍高いことが報告されている。 また、CO2よりも約290倍※温室効果がある亜酸化窒素(N2O)は、化学肥料の過剰な土壌への添加と土壌中の微生物の活動によって生成される。さらに、植物に吸収されなかった窒素などの栄養は、河川などの外環境に流出することで生態系にダメージを与え、環境への負荷となる。このような現状から、土壌中における微生物の活動を適切にコントロールし、環境負荷を低減する技術が求められている。

※ 各ガス1kgの排出が、その後の一定期間(この場合100年間)に地球温暖化に与える効果の累積を二酸化炭素の場合と比較した場合(環境省 https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h03/7824.html より抜粋)

論文情報:【Scientific Reports】Identification of a comprehensive set of transcriptional regulators involved in the long-term survivability of Escherichia coli in soil

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