群馬大学と日本パレットレンタル株式会社(以下JPR)の共同研究により、効率が高い組み合わせを瞬時に列挙する共同輸送マッチング技術が開発された。

 人手不足が顕在化しつつある「物流危機」の一方で、トラックの積載効率は40%未満(トラックの荷台に積まれている荷物は平均4割未満)と低水準にとどまる。より少ないトラックでより多くの荷物を運ぶためには、1台のトラックで3本の輸送を逐次的に処理する「三角輸送」や、荷物を混載して同時に運ぶ「混載輸送」といった複数企業による共同輸送が有効と考えられるが、膨大な輸送ルートの中から効率が良い三角輸送や混載輸送を探索することは、単純な総当たりでは計算機をもってしても時間がかかってしまい、マッチング依頼に瞬時に応答できるシステムの構築は困難だった。

 これに対し、本研究で開発した技術では、数学分野で知られる「距離の公理」(別の地点を経由して目的地に向かう距離は、目的地に直接向かう距離以上になる、等)といった背後に潜む不等式を活用することで、協力によりメリットが得られる効率性の高い輸送ルートの探索範囲を大幅に絞り込む。さらにデータ構造や探索の走査順序の工夫を重ねて、候補の高速列挙を可能とした。約17,000 本の輸送データを用いた実証実験では、単純な総当たりに比べて、三角輸送の探索の場合は平均4,000 倍速く、混載輸送の探索の場合は平均1,500 倍速く、かつ正確に、条件を満たす組み合わせを列挙できた。

 本技術は、JPRが提供する共同輸送マッチングシステム“TranOpt”にコアエンジンとして搭載され、2021年10月21日から一般ユーザーも利用が可能となった。本技術が広く活用されることで、物流業界の問題解決が進むことが期待される。

参考:【群馬大学】協力効果が高い輸送ルートの組み合せを高速に列挙する共同輸送マッチング技術を開発(PDF)

大学ジャーナルオンライン編集部

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