大阪大学の藤山和仁教授らの研究グループは、株式会社明治、明治ホールディングス株式会社、東北大学と共同で、8種の母乳中ヒトミルクオリゴ糖(HMOs)濃度の測定法を開発し、母乳中HMOs含量を評価。さらに、そのうち3種のHMOsと、子の頭囲の成長や精神神経発達指数との間に正の相関関係があることを明らかにした。
HMOsは母乳に多く存在する難消化性オリゴ糖で、子の腸内環境を整える栄養素。海外の研究では、子の精神神経発達との関連が示されていたが、日本人を対象とした研究はなかった。また、さまざまな種類のHMOsについて個々に適応した測定法は未開発であった。
研究グループは、母乳中のHMOs8種について、高速液体クロマトグラフィー/質量分析により定量する測定法を開発し、母乳栄養児の母親から産後1カ月に採取された母乳中の各HMOsの濃度を測定した。
さらに、これらの成分について、母乳栄養児の生後1カ月、5カ月、9カ月までの頭囲の成長と、生後6カ月、1歳、2歳の各時点での精神神経発達指数との関連を多変量解析により評価した。
その結果、8種のHMOsのうち、2’-フコシルラクトース(2’-FL)に「子の頭囲の成長(出生から生後5カ月)」、および「精神神経発達指数(24カ月微細運動)」との正の相関を認めた。また、2’-FL分泌型の母乳を持つ母親の解析対象者では、3’-シアリルラクトース(3’-SL)が「12カ月時点の粗大運動発達指数」、ジシアリルラクトNテトラオース(DSLNT)が「12カ月時点の微細運動発達指数」と正の相関を持つことが確認された。
今回の研究成果は、乳幼児の健全な成長と、発達における母乳中成分の役割を解明する重要な知見となりうるとしている。