日本大学薬学部の榛葉繁紀教授を中心とする研究グループは、不規則な生活により体内時計の機能が低下すると肥満になるメカニズムを解明した。
夜型生活やシフトワークなどの不規則な生活は、疫学的、そして経験的に肥満との関係が示されている。しかし、不規則な生活、すなわち体内時計の乱れた状態が、どのようにして肥満や肥満関連疾患の発症を誘発するのかについては不明だった。
そこで、本研究グループは、脂肪細胞特異的に体内時計機能を低下させたマウス(AAKOマウス)を作製し、肥満との関連を解析した。
まず、AAKOマウスは、正常マウスと比較して脂肪細胞が肥大化していることを発見した。なぜ脂肪細胞が肥大化するのかというと、AAKOマウスは、正常マウスよりもインスリン感受性が高い(インスリンの効きが良い)ことを突き止めた。脂肪細胞は、膵臓から分泌されるインスリンの働きにより血液からグルコースを取り込み、脂肪に変換(代謝)して蓄積するため、インスリン感受性が高いと、より脂肪を溜めこみ、肥大化するのだという。
次に、なぜAAKOマウスのインスリン感受性が高まるのかを調べた。その結果、AAKOマウスの脂肪組織において、インスリンの感受性を高める作用を持つホルモンであるFGF21の量が増加していることを見出した。AAKOマウスの脂肪細胞においてFGF21遺伝子を欠損させた場合は、脂肪細胞の大きさとインスリン感受性が正常マウスと同程度となったことから、FGF21が肥満発症の原因であることが示された。
さらに、正常マウスでは、Fgf21遺伝子に転写抑制因子が結合しており、Fgf21の発現量が調節されているが、体内時計機能が低下したAAKOマウスでは、この抑制因子が外れ、Fgf21の発現量が増加していることを突き止めた。このことから、体内時計が制御するFGF21量は、不規則な生活による体内時計の機能低下で分泌増加し、結果としてインスリン感受性増加、脂肪細胞の肥大化をもたらすというメカニズムが明らかとなった。
本研究成果は、不規則な生活と肥満との関係を分子レベルで明らかとしたことで、「規則正しい生活の励行」に科学的エビデンスを与えるものだとしている。