東北地方の三陸沖で海水温が過去1年間に平年より6度も高くなっていることが、東北大学大学院理学研究科の杉本周作准教授らの調査で分かった。世界の海で最大の上昇幅で、千葉県から東へ流れ去る海流として知られる「黒潮続流」の異常な北上が影響している。また、これにより冬季の海上気温も大きく上昇し、その影響は上空約2000mまで及ぶことが分かった。
東北大学によると、研究グループは人工衛星観測データを基に三陸沖の海水温を解析、2023年以降平年より6度も高い状態が続いていることを発見した。気象庁が2024年5月に実施した三陸沖の観測航海で得られたデータを解析したところ、通常千葉県銚子市沖で東へ進む黒潮続流が2022年末から北に迂回し始め、2024年春には北端が青森県沖に達するなど異常に北上していた。
海水温を上げたのは黒潮続流が運ぶ南方の高温水が流入したためで、影響は深さ700メートルに及び、特に深さ400メートルの水域では平年より10度近い水温上昇が確認されている。さらに、海からの熱放出が冬の海上気温を高め、影響が高度2,000メートルに達していることも明らかになった。
三陸沖は本来、100メートル以上深い場所では水温が8度以下になる冷たい場所。異常な水温上昇により、宮城県沖で瀬戸内海のテンジクダイや静岡県以西の太平洋岸に生息するミナミクルマダイなど南方の魚が水揚げされるなど、生態系に大きな影響が表れ始めている。