麻布大学、京都大学、東京都医学総合研究所の研究グループは、社会的疎外感が高くてもウェルビーイングが高い人は、イヌやネコに対する親密な愛着が高く、心のうちを打ち明けるような関係性を築いていることを明らかにした。
思春期に社会や文化との価値観の不一致を経験すると、その後の人生に大きな影響を与えることがある。しかし、そのような価値観の不一致を認識しても、伴侶動物と関わることで、精神的健康への影響を軽減できる可能性がある。研究グループは、思春期におけるイヌやネコとの関わり方が、社会との価値観の不一致とウェルビーイングの関係に与える影響の解明に取り組んだ。
研究チームは高校生・大学生を対象にアンケートを実施。得られたデータから、イヌやネコとの関わり方、社会的疎外感(文化的離反尺度)、ウェルビーイングについて解析した。文化的離反とウェルビーイングの平均値に基づき、文化的離反が高い中でウェルビーイングが高いグループと低いグループを比較し、動物観やイヌ・ネコへの愛着の違いを調べた。
その結果、文化的離反が高くウェルビーイングが高いグループは、文化的離反が高くウェルビーイングが低い人々より、イヌやネコに対して高い親密な愛着が示された。さらに、「ペットにいつも大事なことや心のうちを打ち明ける」ことが多かった。動物観では、環境や野生動物に対する人間中心的な考え方や生態・環境への関心が認められた。
今後、イヌやネコに心のうちを打ち明けることによる個人の心理的・生理的変化の実証的研究や動物観の詳細な分析により、伴侶動物がヒトの精神的健康にもたらすサポートのメカニズム解明が期待できるとしている。