京都府立医科大学大学院の北岡力 助教らの研究グループは、術後に生じた精神症状に対して使用された向精神薬等の実態調査を行い、精神科医等の専門家による助言・指導(精神科リエゾンコンサルテーション:以下、リエゾン)が依頼されたケースと、依頼のないケースで処方内容の比較を実施した。
手術を受けた患者は、術後に意識の混濁などを呈する「せん妄」をはじめ、様々な精神症状を呈することがある。精神症状への対応は外科主治医が行うことが多く、リエゾンの有無が、術後の向精神薬(精神に作用する薬剤)処方にどう影響するかに関する報告はなかった。
研究グループは今回、2つの総合病院で全身麻酔手術を受けた全患者を対象に、向精神薬等(精神症状治療用の薬剤)の処方実態を調査した。また、リエゾン介入の有無、術後せん妄発症の有無、薬剤性有害事象(薬剤使用に伴う健康被害)、患者の背景情報を合わせて調査し、その関連を調べた。
その結果、術後に向精神薬等を開始した患者のうち、リエゾンに介入依頼があったケースは全体の約13%で、術後の向精神薬等の約73%は外科主治医が処方していた。術後せん妄を呈した患者に処方した向精神薬等の内訳はリエゾン介入の有無で大きな違いはなかったが、全ての術後患者への処方内容について、術後せん妄の誘発リスクがあるベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用頻度や、せん妄のない患者への抗精神病薬の使用頻度は、介入群では少なかった。
今回の研究結果は、リエゾン精神科医の関与のもと推奨される術後の向精神薬処方ガイドの作成・普及により、病院全体における術後患者への向精神薬等の使用適正化に寄与することが期待されるとしている。