上智大学文学部の坂野正則教授らは火災から復興中のフランス・パリのノートル=ダム大聖堂で小屋組や鐘楼の現地調査をした。日本の大学が大聖堂復興の学術調査をするのは初めてで、修復責任者に単独インタビューを行い、文化財保護や宗教的文化財の価値継承に関する知見を収集した。
ノートル=ダム大聖堂はパリのシテ島で12~13世紀に建築された歴史的建造物で、観光名所にもなっている。2019年4月、大規模な火災により屋根の尖塔が崩落し、2024年12月に大部分の修復を終え、教会堂としての使用を再開した。
上智大学によると、坂野教授ら上智大学の研究チームは2025年3月、大聖堂を訪れ、屋根や尖塔、小屋組を検分するとともに、修復責任者のフィリップ・ヴィルヌーヴ氏から復興方針や文化財保護に対する見解を聞き取った。
大聖堂は復旧工事が進められているが、火災前と異なる資材が一部で使われていた。内部空間にも火災前と違う部分が見られた。この点について、ヴィルヌーヴ氏は復興作業がローマ・カトリック教会の意向とフランス政府の文化財保護の方針を両立させる形で進められ、オリジナルそのものでなくても加工技術や仕様の伝統継承を認めるという1994年に奈良県奈良市で開催された国際会議で採択された奈良文書に従っていることを説明した。
また研究チームはヴィルヌーヴ氏から、今まで知られていなかった修復においてベースとなる考え方や様々な分野で修復を担う職人たちとのコミュニケーションの取り方に関しても知見を得た。今後はカトリック教会側の修復担当者から、修復に関する理論的骨格や工夫などについても調査を継続していくとしている。
参考:【上智大学】フランス・ノートル=ダム大聖堂の小屋組や鐘楼に関する現地調査を実施 ノートル=ダム大聖堂の火災復興過程と文化財保存についての学術調査は日本初