東北学院大学経済学部の黒阪健吾研究室は、農家の作業効率向上を妨げている分散錯圃(ぶんさんさくほ)について、農地集約事業がどれだけ効果を上げるか検証する大規模実証実験を企画し、参加する地方自治体の募集を始めた。
日本農業の課題の一つに農家の耕作地が複数の場所にある分散錯圃が挙げられる。農家の作業時間の10~15%が耕作地間の移動に充てられているとする研究結果も出ており、耕作地の集約が農家の作業効率向上を実現するカギの一つになる。しかし、農業所得の不安定さや農地を資産と考える意識などから、農地取引は活発でない。
そこで、黒阪研究室では農家から耕作したい土地としたくない土地を専用アプリ経由で聞き取り、農家が納得できる農地の集約案を自動作成する農地集約システムを開発した(特許出願中)。PCやモバイル端末を⽤いて農家から耕作地に対する選好情報を収集し、これらの選好情報とマッチング理論に基づいたアルゴリズムを⽤いることで、農家が納得できる農地の集約案を⾃動的に作成するもので、これをたたき台にすることで市町村が地域計画を作成する⼿間を⼤幅に短縮するほか、話し合いだけでは気付くことが難しい潜在的な農地交換の可能性を発⾒できる。
2024年9月から2025年2月にかけて岩手県盛岡市で31軒の農家、2304筆の農地を対象に実証実験を行ったところ、16軒の農家が参加して14組がマッチング。圃場の分散の度合が最大12.3%減少し、平均的な農地の大きさは最大11.4%増加した。
これを受け、今回は検証範囲を全国規模に広げた大規模実証実験を行う。参加自治体からプログラム実施候補の2地区を挙げてもらい、1カ所で集約を実施、もう1カ所は実施せずに農地利用の変化を比較する。対象は米生産農地で、応募は自治体が行う。黒阪健吾研究室で7/4(金)17時まで応募を受け付けている。