顔のシミ(色素性病変)を正確に識別する人工知能(AI)モデルを、近畿大学医学部皮膚科学教室などの研究グループが開発した。
顔のシミやあざは、主に5種類の色素性病変(肝斑、雀卵斑(そばかす)、後天性真皮メラノサイトーシス、日光黒子、悪性黒子・悪性黒子型黒色腫)に分類される。これらは、見た目が類似するため診断が難しい一方で、間違った診断に基づく治療は大きなリスクを伴う。たとえば、肝斑に対する不適切なレーザー治療は逆に悪化を招く。ほくろと見分けづらい希少がんである悪性黒子型黒色腫は、見逃すと治療の遅れに直結するほか、レーザー治療を実施してしまうと、がん再発時の手術が困難になるケースや、逆に浸潤がんとなるケースもある。
そこで今回、研究グループは、特にレーザー治療の可否や選択の判断を支援する目的で、診断の難しい顔面色素性病変の種類を高精度に見分けるAIモデルを開発した。
診断支援システムの構築にあたり、InceptionResNetV2およびDenseNet121というディープラーニング(深層学習)モデルを用いて、432枚の臨床画像で顔面色素性病変の分類を学習させた。学習済みモデルの診断精度を検証した結果、InceptionResNetV2が87%、DenseNet121が86%を記録した。これは、皮膚科専門医9人の診断精度(中央値80%)と、非専門医11人の診断精度(中央値63%)をいずれも上回った。
特に悪性黒子・悪性黒子型黒色腫の識別では、両モデルとも精度100%を達成したという。悪性の病変を見逃さず、適切な診断支援や治療計画の決定に寄与することが期待される成果だ。
将来的には、治療適応判断や副作用予測といったモデル拡張も視野に入れ、臨床環境下での有効性検証を進めていくとしている。