広島大学大学院と広島大学病院の研究グループは、高音質な音響デバイスで1日1時間高音域の音楽を聴くことで、難聴者の脳が活性化し、騒がしい環境でも言葉が聞き取りやすくなる効果を確認。補聴器を使わない新しい聴覚リハビリとして期待される。
難聴対策として補聴器の使用が一般的だが、「長時間の装着が難しい」「使いづらい」などの問題がある。そのため、補聴器に代わる新しい聴覚リハビリテーションの選択肢として、明瞭で聞き取りやすい「高精細な音」を活用した音響療法が注目を集めている。
今回、補聴器では補いにくい高音域(2kHz~8kHz)および超高音域(8kHz以上)の音を明瞭に再現する高明瞭化音響デバイスを用い、高音の聴こえが残っている難聴者40人に対して、35日間、毎日1時間の音楽聴取により、脳の音処理機能がどのように変化するかを検証した。
その結果、難聴患者の騒音下における音声知覚能力が改善し、明瞭聴取音(高音域を強調し歪みを抑えた高精細音)療法が、聴覚に関する脳活動を活性化することが示された。明瞭聴取音療法は年齢に関係なく有効と認められ、特に高音域の聴力が比較的保たれている被験者では大きな効果が得られた。明瞭聴取音療法により脳の音声処理能力が向上し、「騒音下での聞こえ」の改善につながったと考えられる。
今回の研究成果により、非装着型聴覚リハビリという新しい選択肢を提供する可能性がある。今後、最適な使用時間や期間の特定、補聴器との比較による満足度の評価など、実践的条件下での効果や長期的な効果・持続性を確認し、実用化に向けた開発や臨床応用の検討を進めるとしている。