新潟大学などの研究グループは、アルツハイマー病の遺伝的リスクを数値化したポリジェニックリスクスコア(PRS:Polygenic Risk Score)が、多くの国で共通してアルツハイマー病の発症リスクと実際に関連することを、多施設共同国際研究により明らかにした。
アルツハイマー病は、加齢だけでなく、特定の遺伝的バリアントが発症リスクに関与することが知られている。PRSは、このような個人の遺伝的リスクの強さを数値化しているが、これまでPRSとアルツハイマー病の関係は一部の国でしか検証されていなかった。
そこで今回、ヨーロッパ17カ国、東アジア3カ国、アフリカ2カ国、南アメリカ4カ国、インド、オーストラリアの計28カ国のアルツハイマー病患者122,840人と健常高齢者424,689人のPRSを用いて、大規模な検証を行った。各国のPRSとアルツハイマー病発症リスクとの関連についての解析結果を統合した結果、サンプル数が少なかったインドとアフリカ諸国を除き、PRSは健常者よりもアルツハイマー病患者で優位に高いことが確認された。さらに、PRSが高いほどアルツハイマー病の発症年齢が早いこと、髄液バイオマーカーの変化量が増加することなどもわかった。
本研究で用いたPRSは、ヨーロッパ祖先集団のゲノムワイド関連解析により同定された遺伝的バリアントに基づく。今回の検証で、ヨーロッパ祖先集団に基づくPRSが、異なる祖先集団でも一貫してアルツハイマー病リスクと関連を認めたことから、既に報告された遺伝的バリアントが、祖先集団を問わずアルツハイマー病の遺伝的要素の多くを説明する可能性がある。今後、PRSを用いたアルツハイマー病の発症リスク予測や早期診断が期待される。
アルツハイマー病だけでなく、その他の認知症(前頭側頭型変性症やレビー小体)とPRSとの関連も調べた。その結果、PRSの効果はアルツハイマー病で最も強く、その他の認知症では低いことが判明した。すなわち、様々な認知症の中でもアルツハイマー病に特異的な遺伝的バリアントの存在が示唆され、ゲノム情報に基づく認知症の層別化に向けた応用も期待される成果だとしている。