麻布大学、清水建設株式会社、富士工業株式会社は、空気中に含まれる揮発性有機化合物(建材や家具、日用品などから揮発するガス 以下、VOC)を低減する動物病院向けのVOC低減型空気清浄機を共同開発した。2025年度内の動物病院への導入を目指し、製品化に向けた機能検証を進めていく。

 屋内の空気環境は、建築構造や換気の状況に左右され、条件によっては屋外よりも数倍汚れている場合がある。特に、空気中に含まれるVOCについては、住宅や学校、オフィスにおいてアレルギーの発症など人の健康に与える影響が疫学研究で報告されている。

 一方、薬剤の使用や壁紙・天井材からの放出に起因する化学物質が室内の空気を汚す可能性がある病院・介護施設の医療環境に関する調査は十分に行われていない。また動物病院では、空気環境を改善するために空気清浄機を使用するケースがあるが、一般的な空気清浄機の化学物質の除去性能は限定的であり、化学物質の除去に特化した機器も入手しづらい状況にある。

 そこで、獣医療の知見を有する麻布大学、室内環境評価の知見を有する清水建設、空気環境改善の知見を有する富士工業の3者が協力し、換気性が低い物件で開業したケースなど、空気環境の悪化が懸念される動物病院向けのVOC低減型空気清浄機を開発した。

 このVOC低減型空気清浄機は換気性が限定的な病院でも24時間以内に総VOCを半減し、換気性に優れた大学附属動物病院と同程度の空気清浄度(総VOC100µg/m³以下)を達成できる。また家庭用電源で稼働し、搬入後すぐに使用することができるという特長を持つ。

 今回、通常の空気環境とVOC低減型空気清浄機を使用した際の空気環境で飼育したマウスについて、麻布大学と清水建設が喘息とアトピー性皮膚炎の発症状況を比較したところ、清浄化された空気環境で飼育したマウスの症状が変化する可能性が示唆された。

 さらに空気環境改善の技術をもつ富士工業が加わり実環境における空気環境改善効果を3者連携で実証した結果、空間が狭く換気性が低い動物病院でも、VOC低減型空気清浄機の稼働により、総VOC濃度が大幅に低減されることが確認された。この発見から、ケミカルフィルターを用いて空気中の化学物質を制御することで、アレルギーをはじめとする気道や皮膚の疾患が抑制される可能性が示唆された。

 3者は今後、VOC低減型空気清浄機の2025年度内の製品化と動物病院への導入を目指し、部屋の広さや空気清浄機の風量に依存する総VOC濃度の低減効果の調査など、製品化に向けた検討を進めていく。さらに、開発で得られた知見を活かし、病院・介護施設など人を対象にした医療空間への展開も検討していく。

参考:【麻布大学】麻布大学、清水建設、FUJIOH 産学連携で動物病院向け VOC 低減型空気清浄機を共同開発 ―動物の健康への影響を抑える化学物質管理技術、2025年度内の製品化を目指す

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