芝浦工業大学工学部・菅谷みどり教授(基盤システム研究室)と株式会社エナリスの研究チームは、昨年度に引き続き、電力制御ロジックにMEC-RM技術を組み合わせることによる分散制御手法に関する研究を行うと発表した。低圧リソースの制御精度と供出可能量の向上を目指す。
電力需給バランスの維持に必要な電力「調整力」を取引する需給調整市場では、2026年度から活用リソースの範囲が低圧リソースにも広げられる。しかし、市場への入札には、リソースを1000kW以上の容量に束ねる必要がある。要請される供出量に合わせて、電気自動車や家庭用蓄電池など、数kW~数十kWの小容量で供出可能量が刻々と変動する低圧リソースを大量に制御して供出し続けるには、高精度の遅延なく制御する技術が必要。
そこで、研究チームは2024年度から、技術汎用性があり高速性能の分散制御処理技術MEC‐RMを、低圧リソースの制御に活用する共同研究を行ってきた。昨年度は「大量の低圧リソースの高精度制御」と「制御環境の低コスト化」を重点とし、MEC‐RM技術により、同一性能のサーバでも10倍以上の低圧リソースを制御できる結果を得た。
2025年度は、MECサーバにIoTを加えた「MEC+IoT」での自律分散制御を目指す。従来のMECサーバでの集中制御に加え、IoT機器のわずかな計算能力も活用し、MECサーバのみならずIoT機器間で相互の自律分散制御を行う。
これにより、MECサーバの計算能力を増やさずに、システムでの制御対象リソース数などのスケーラビリティ向上を図る。また、IoT機器側での自律分散処理を進めることは、MECサーバからの制御指示回数の減少をもたらし、通信コスト低減効果が見込める。技術活用により、通信障害発生時の制御精度維持の検討にも取り組むとしている。
参考:【芝浦工業大学】MEC+IoTによる低圧リソース自律分散制御で 制御精度/供出可能量/通信コストのさらなる最適化を実現 ~芝浦工業大学とエナリスが共同研究~