生物多様性の研究を推進し、2027年4月には環境サステナビリティ学部(仮称・設置構想中)の開設を予定している龍谷大学は、地域の環境課題解決に先駆的に取り組む公益財団法人東近江三方よし基金、サステナブルファイナンス分野を牽引する株式会社滋賀銀行と連携し、滋賀県を舞台に生物多様性保全の実効性を可視化する「生物多様性保全総合指数(BCCI: Biodiversity Conservation Composite Index) 」の研究開発プロジェクトを本格始動する。
現在、世界的に「ネイチャーポジティブ(自然再興)」への関心が高まっており、生態系の機能保全と再生が求められている。その実現には、地域固有の生物多様性を適切に評価できる、地域に根差した“自然のものさし’’が不可欠となっている。
滋賀県では「生物多様性しが戦略2024 」に基づき、湖沼・河川の水質保全や自然公園の管理など、取り組みごとに定量的な現状・目標値を設定している。しかし、進捗を測るうえで明快な指標が存在しないことが、政策や企業活動の推進における障壁となってきた。特に生物多様性は地域ごとに大きく異なるため、地域ごとに実効性があり、社会に受け入れられる柔軟な指標設計が求められている。
「生物多様性保全総合指数(BCCI)」とは、個々の生物種数にとどまらず、生態系の健全性や構造的多様性、機能など複数の指標を組み合わせて総合的に評価し、一つの数値として表すものである。本プロジェクトでは、地域に根ざした生物多様性保全と社会・経済活動を結びつける革新的な総合指標の開発を目指す。
具体的には、“現地で取得した現在のデータ”を活用し、龍谷大学生物多様性科学研究センターが保有する既存の生物多様性情報や生態系シミュレーション手法と組み合わせ、現在の生物多様性科学の知見に基づく有効な指標の検討・抽出を行う。さらに、考案した指数の評価・改善を目的として、管理手法の違いが森林の生物多様性に与える影響を調査・分析し、新たな総合指数の算出を実施する。また、実際の金融商品における総合指数の活用も行い、事業主や預金者、施策決定者などが有効に活用できるモデルの構築を目指す。
本プロジェクトの成果は、 “自然と共にある経済”としてのサステナブルな地域発展モデルを滋賀から全国へ発信するものであり、この評価指標が市民や企業の行動変容、さらには環境ファイナンスの促進につながる枠組みとなることが期待されている。
参考:【龍谷大学】「生物多様性保全総合指数(BCCI)」研究開発プロジェクトが始動【生物多様性科学研究センター/先端理工学部】