北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)幌延地圏環境研究所(H-RISE)と日本原子力研究開発機構および広島大学の研究グループは、北海道・道北地方に位置する幌延町の陸域地下環境から、水素を作り出す新種の微生物「Gaoshiqia hydrogeniformans Z1-71T株」を発見した。
深部地下環境には、未だ人類が利用できない膨大な種類の微生物が存在していることが明らかとなっている。本研究グループは、地下に存在する有機物から、微生物の作用によってバイオメタンを生成する技術開発を進めてきた。今回、日本原子力研究開発機構が有する幌延町の深地層研究施設を利用して、地下250メートル調査坑道から地下水試料採取を行い、新規の微生物を探索した。
その結果、有機物を分解し水素を作る新種の細菌「Gaoshiqia hydrogeniformans Z1-71T株」の取得に成功した。Z1-71T株は、ブドウ糖などの有機物を分解して、水素やギ酸(低分子量の有機物)を作り出すという。
さらに、過去に同地域から取得したメタン菌(T10T株)とZ1-71T株を一緒に培養することで、メタンガスが生成することを見出した。Z1-71T株が供給する水素や有機物をエネルギー源として、T10T株がメタンを生成する。幌延の地下環境でも、地中の有機物をエサとした2種類の微生物の共生的な関係で、バイオメタンが生まれている可能性があるとしている。
本研究により、水素を発生する微生物が見つかったことから、水素からバイオメタンを生成する詳細な機構の解明、ひいてはエネルギー資源として利用されるメタンガスを効率的に作り出す技術開発につながることが期待される。また、陸域地下環境でのメタン菌と、メタン菌の活動に協力する微生物との共生機構および地下環境でのメタン生成機構にも関心が高まることが期待される。