自分の手のひらや握りこぶしなどを使って食品の量を測る方法である「手ばかり」は、特別な道具を必要とせず、シンプルでわかりやすいことから、適正な食品量の目安を示す栄養指導などの場面で活用されている。一方で、手ばかりにより推定された食品の量が、実際の食品重量とどの程度関連するのかについては、これまで十分な科学的検証が行われていなかった。
今回、東京大学の研究グループは、日本人成人を対象に、日常的な食事の中で手ばかりをもとに申告された食品の量(例:手のひら〇枚分)と、実際に計測した食品の重さ(g)との関連を分析した。
研究に参加した20~69歳の1,081人に、4日間の食事ごとに、食べた食品の重さをキッチンスケールで量って記録するとともに、自分の手ばかりを使って食べた量(見た目のボリューム)を表現してもらった。ごはん・パン・めん類と果物には「こぶし〇個分」、肉・魚・卵・豆類には「手のひら〇枚分」、野菜・海藻・きのこ類には「手のひら〇杯分」の表現を用いた。
得られた合計12,148食分のデータを分析した結果、手ばかりで測った食品の量と、実際の食品重量との間には中程度から強度の関連が認められた。ただし、「こぶしや手のひら1つ分の重さ」は、個人間でばらつきが大きく、特に男性の「こぶしや手のひら1つ分の重さ」は女性よりも有意に大きかった。
将来的に手ばかりを食事調査へ応用することも見据えて、手ばかりで申告された量と個人の特性(年齢・性別など)から、実際の食品摂取量を推定する予測式(回帰モデル)も作成した。予測式の精度は、やや広い誤差幅があるものの、中程度から強度の相関があると評価された。
本研究は、さまざまな食品を対象として手ばかりの有用性を初めて明らかにした。予測式を用いて食品摂取量の推定に活用できる可能性も示されている。他方、手のひら1つ分に相当する食品の重さには個人差が大きく、手ばかりを使って食べる量の目安を伝えると、人によって多すぎたり少なすぎたりする可能性も示された。今後は、より多様な食品群や、さまざまな国や地域での検討を進め、手ばかりのさらなる活用可能性を探ることが求められる。