京都大学フィールド科学教育研究センターの伊勢武史准教授と大庭ゆりか特定助教は、ディープラーニングを用いて10年間の平均気温の上下を最大精度97%で推定する手法を開発した。
気候変動予測は従来、スーパーコンピュータを用いた物理計算が主流だ。しかし、既知の物理学の知見を積み重ね、モデル化して全体を理解する「ボトムアップ型」の従来手法では、細かく計算しようとすればするほど精細なシミュレーションモデルとより大きなスパコンが必要となり、予算とマンパワーを膨張させてしまう問題があった。
対して本研究では、統計的に傾向を分析する「トップダウン型」の思考を取り入れた。まず、過去の全世界の気温データから連続した30年分を抜き出し、縦に1月から12月の各月の温度、横に30年の年ごとの温度を配置し、温度の高低を色で表した疑似カラー画像を生成した。画像にするのは、人工知能がその特徴を学習しやすくするためだ。
数万から数十万枚の疑似カラー画像を生成し、ディープラーニングで学習させると、過去の気温データからその後10年の平均気温が上がるか・下がるかを最大精度97%で予測することが可能になったという。実際に2016年までの気温データからその後10年の平均気温を予測してみると、全世界で見れば温暖化が進むが、地域によっては温度上昇がゆるやか、あるいは気温が下がることもあり得るとの結果が得られた。このように地域ごとの違いを予測することは、今後の気候研究や温暖化対策の進展に貢献する可能性がある。
本研究グループは今後、この手法のさらなる高精度化や、既存のボトムアップ型気候予測との統合も進めていく考えだ。