早稲田大学、国立精神・神経医療研究センター、横浜市立大学の研究グループは、外力によって損傷した視神経の再生が、CRMP2というタンパク質のリン酸化抑制により促進されることを明らかにした。

 脳や脊髄などの中枢神経系は一度ダメージを受けると再生しないため、神経疾患の治療が難しい。再生には、神経細胞が新たに作られる神経新生と、一度切断・損傷を受けた神経の軸索が再び伸長する神経軸索再生がある。大人の脳での神経新生は増殖や分化の制御のメカニズムに不明な点が多い。一方、中枢神経系には神経軸索再生が阻害される仕組みがある。

 研究グループは、中枢神経系が損傷を受けた際に神経細胞側でリン酸化するCRMP2というタンパク質に着目。CRMP2は微小管結合タンパク質の一つで、非リン酸化状態で微小管に結合し、微小管の安定化と重合を促進する。これまでも脊髄の損傷モデルで、独自に開発したCRMP2のリン酸化を抑制した遺伝子改変マウスは、野生型のマウスよりも運動機能回復が良好であることを報告してきた。

 今回の研究では、視神経の損傷モデルでこの遺伝子改変マウスを用いて、CRMP2のリン酸化抑制が損傷後の神経軸索再生に有効かを検討。その結果、視神経損傷直後に起きる微小管の脱重合が軽度で、網膜神経節細胞の脱落が少なかった。また、神経再生マーカーGAP43の発現増加がみられ、神経再生が顕著に促進されていることを見出した。

 今後、視神経損傷と同様の病態とみられる緑内障などの眼科疾患やALSなどの神経系変性疾患に対しても、CRMP2のリン酸化抑制による病気の進行抑制の可能性や、CRMP2リン酸化抑制剤の有効性に関し、遺伝子改変マウスを用いて検証する必要があるとしている。

論文情報:【Scientific Reports】Genetic inhibition of CRMP2 phosphorylation at serine 522 promotes axonal regeneration after optic nerve injury

早稲田大学

研究・教育・貢献を3本柱に、「世界で輝くWASEDA」をめざし改革

早稲田大学は、「学問の独立・学問の活用・模範国民の造就」の3つの建学の理念に基づき、答えのない課題に挑む礎となる力を全学生が磨ける比類ない環境を整備。揺るぎない国際競争力を備えた世界トップクラスの大学「世界で輝くWASEDA」をめざし、「研究の早稲田」「教育の[…]

横浜市立大学

ヨコハマと歩む。受け継がれる伝統、国際性、進取性に富む学風

開国・開港の地、横浜にふさわしく、開放的で国際性、進取性に富む学風は、横浜市立大学の伝統として今も受け継がれ、実践力のある数多くの優れた人材を輩出しています。豊かな教養、人間性、倫理観を養う人間教育の場とし、先端研究の成果と高度医療を発信する「横浜から世界へ羽[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。