早稲田大学と北九州市立大学の研究グループは、微細加工技術を用いて金属製ナノ加工穿刺薄膜を開発し、これを細胞に挿入することでナノ管を通して細胞内に物質を効率良く導入することに成功した。

 細胞への物質導入技術は数多くあるが、抽出も含めた手法はナノニードルを用いた物理的手法しかない。単針による手法は管が詰まると使えないなど扱いにくいが、複数針(ナノ管配列)を用いた手法は、細胞への針の挿入が簡便で、導入・抽出の効率が高い。現状、開発が進む複数針は絶縁性や半導体性ナノ管が中心で、金属製の管をナノスケールの直径とマイクロスケールの長さという高アスペクト比(長辺と短辺の比)で実現した例はない。

 研究グループは、無電解メッキとエッチング技術を融合した微細加工技術により金属製ナノ加工穿刺薄膜を作製する簡便な手法を開発。まず表面に細孔が分散したポリカーボネート(PC)の薄膜(トラックエッチドメンブレン)に金(Au)の無電解メッキを行ってAu/PC薄膜を作製。その後、ウェット・ドライ加工により金薄膜の除去と露出したPC薄膜のエッチングを実施してナノ加工穿刺薄膜を形成。この手法で様々なナノ菅を作製し、カルセイン色素やオリゴDNAの導入に成功した。その導入効率および細胞の生存率も高かった。

 本手法は、細胞へナノ管を直接挿入できるため、エンドサイトーシス(細胞膜陥入による物質取り込み作用)を介さない細胞内アクセスを実現した。また、一度の押印で多くの細胞に多種の物質を導入できる簡便さと高い導入効率を達成し、導入タイミングの調節も可能。今後、細胞に関する基礎研究から再生医療や創薬、培養促進など応用研究への展開が期待される。

論文情報:【Scientific Reports】Nanostraw membrane stamping for direct delivery of molecules into adhesive cells

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大学ジャーナルオンライン編集部

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