早稲田大学理工学術院の関根正人教授、東京大学地球観測データ統融合連携研究機構の喜連川優教授らの研究グループは、東京都23区で発生する都市浸水をリアルタイムで予測するシステムを開発。2019年6月末までに試行運用開始を目指す。
現在、地球規模での気候変動の影響が顕著化してきており、未曾有の豪雨が発生すれば東京でも深刻な浸水の発生は避けられない状況となってきている。そこで研究チームは、東京都23区がこれまでにない規模の豪雨に襲われたとき、「どのような規模の浸水が発生するのか」、「浸水が深刻化するプロセスとはどういうものか」、「事前にどのような対策をすればどの程度被害軽減が図れるのか」という問いに対し、最新の技術を駆使して予測した結果を踏まえた答えを提示することを目標に研究を開始した。
研究の第一段階として、早稲田大学の関根教授が、東京に代表される高度に都市化されたエリアを対象に、「都市浸水」の発生とこれが深刻化するプロセスを水の流れを支配する力学原理のみに基づいて細かく予測する手法「S‐uiPS(スイプス)Sekine’surbaninundationPredictionSystem」を開発。第二段階として、東京大学地球観測データ統融合連携研究機構と協力し「S‐uiPS」の計算コードを高速化することで、リアルタイムでの浸水予測を可能とした。しかし、この計算には膨大なデータの高速処理が必要なため、文部科学省のデータ統合・解析システムDIASのリアルタイム・データ利活用プラットフォーム基盤上で行うことにした。
今回開発したリアルタイムで浸水を予測するシステムは、まず東京都23区を対象に、2019年6月末までには文部科学省のDIAS上で試行運用を開始する予定。その後、雨が多い時期に開催される2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックまでには、十分な精度を有する浸水情報を継続的に提供できるような安定した運用を目指し、システムの社会実装を進める。