総合研究大学院大学の長谷和子特別研究員と沓掛展之教授は、オタマジャクシが発達段階によって群れる相手の好みを変化させることを発見した。

 池の中で群れて泳ぐオタマジャクシ(カエルの幼生)を観察すると、大きさの異なる幼生が一緒に泳いでいることがある。両生類の幼生では、匂いを用いて血縁者と群れる傾向があることが先行研究から知られているが、体サイズ(発達段階)の違いを同時に考慮した研究はこれまでなかった。

 群れでいると、捕食者に襲われる危険性を減少できるなどの利益が生じる一方、餌の奪い合いなどの競争が起きることになり、小さな個体にとって大きな相手は脅威にもなる。血縁者間で競争が起こるのは好ましくないため、サイズによっては血縁関係にない個体と群れることを好むかもしれない。こうした発想から、ヤマアカガエルの幼生を用いて、群れ相手の好みにおいて血縁関係とサイズの違いを同時に検証する実験を行った。

 水槽に観察対象となる試験個体を入れ、左右にサイズ(大きいまたは小さい)か血縁関係(血縁または非血縁)の異なる二匹の刺激個体を配置した。左右どちらの刺激個体側にいるか、それぞれの滞在時間を算出して比較する実験を、刺激個体の組合せのパターンを変えながら行った。

 その結果、小さな試験個体では、血縁関係に関係なく大きな刺激個体よりも小さな刺激個体を好む傾向がみられた。一方で、大きな試験個体は、刺激個体が両方とも非血縁の場合にのみ大きな刺激個体よりも小さな刺激個体を好んだ。この結果は、小さな刺激個体が血縁者である場合にはみられず、血縁者間の餌をめぐる競争を減らすための性質と考えられた。

 本発見のような相手の大きさと血縁関係の両方を同時に考慮した選好性の発達変化は世界で初めての報告であり、今後、さらなる研究が必要とされている。

論文情報:【Animal Behaviour】Developmental effects on behavioural response for social preferences in frog tadpoles, Rana ornativentris

大学ジャーナルオンライン編集部

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