名古屋大学の研究グループが、砂や珪藻土の主成分である非結晶性シリカと、お歯黒にも使われたタンニン酸鉄から、様々な鮮やかな色の顔料を作ることに成功した。
水銀、カドミウム、六価クロムなどの重金属を含む色材や、鉛系顔料、発がん性の疑われるアゾ染料など、人の健康と環境に有害になると懸念される色材は、安全な材料を利用した代替品への転換が喫緊の課題となっている。
地球上に無尽蔵に存在する化合物であるシリカの微粒子は、化粧品、食品添加物などとして用いられ、生体内にも微量に存在する。植物から得られるタンニン酸と鉄イオンから形成されるタンニン酸鉄も、化粧品、食品添加物などに利用されているほか、日本では昔、お歯黒として用いられていた。前者は白色、後者は黒色を示す化合物だが、本研究グループは今回、これらを組み合わせることで様々な色の色材が得られることを見出し、安全で安価な素材から成る色鮮やかな顔料の開発に成功した。
シリカ微粒子の周りにタンニン酸鉄をコーティングすると、タンニン酸鉄の量に応じて、濃さの異なる灰色の微粒子が得られる。その後、これらの灰色の微粒子の集合体を形成すると、その集合状態に応じて、色相や鮮やかさの異なる顔料になるという。また、用いるシリカ微粒子のサイズやコーティングするタンニン酸鉄の量に応じて、その集合体から観測される色も様々に変化することを見出した。
毒性が問題視されている従来の顔料や染料に代わって、自然調和性に優れ、かつ安価な素材から鮮やかで様々な色を示す材料を構築する原理の開発に成功した本成果は、持続可能で快適な暮らしを後押しするものと期待される。