芝浦工業大学機械制御システム学科の武藤正義准教授らの研究グループは、立正大学、創価大学との共同研究で、「囚人のジレンマ」と呼ばれる競争環境の中で協力関係を実現しつつ生き残る戦略に関して最新の研究成果を発表した。
相互協力が期待されるが、非協力を選ぶ個人の方が常に得するため相互協力の実現が難しい状況を社会的ジレンマと呼ぶ。社会的ジレンマは多くの社会問題の基礎的なメカニズムを有しており、競争的環境で協力的社会の実現可能性を探ることは現代社会での重要課題となっている。
今回、研究グループは「囚人のジレンマ」と呼ばれる社会的ジレンマの基礎的なモデルに、ゲーム不参加という新たな行動を導入した際にどのような戦略が生き残り、協力社会を実現するのかを分析した。従来の研究は単純な戦略の組合せのみの分析だったが、今回、複雑なシミュレーション結果の可視化手法を開発し、約2万の戦略が共存する環境で適応的な戦略分析に成功した。
その結果、将棋などの交互に手を出す逐次手番ゲームでは「裏切られたら逃げ、相手が逃げたら協力する」戦略が支配的になり協力社会が実現する。一方でジャンケンなどの同時に手を出す同時手番ゲームでは「搾取したり搾取されたりした時には裏切り、そうでない時には協力に転ずる」戦略が支配的になることが判明。いずれの戦略も相互協力している時には協力し続けるため基本的に協力社会を維持できるが、協力関係が壊れたときの関係修復過程に大きな違いが見られる。
今回の研究を率いてきた立正大学経営学部の山本仁志教授は、逃避行動が可能であれば「やり返す」行動を使わなくても協力社会を維持できることが示されたことは協力の進化に関する研究を押し広げる可能性がある、としている。