東京都市大学の丸山恵史講師は、温度差を利用して発電できる熱電材料に使用可能な「炭化ホウ素」を、従来より300度低い温度で合成する技術を開発した。

 エネルギー問題や原子力発電等の電力供給問題を背景に、昨今、分散型電源を利用した社会構築に関する研究が進められている。

 熱を利用した発電法である熱電発電技術も、分散型電源の一つとして注目を集めている。固体素子の物理現象による発電であることから、駆動部がなく静音である、さまざまなスケールに対応可能である、クリーンである、恒常的な発電が期待できるなどの利点がある。

 丸山講師の研究室では、熱電変換デバイスとして現在実用化されているビスマス・テルル系化合物よりも、軽量であり、かつ高温でも熱電特性が比較的良好なホウ素系熱電材料の研究を進めてきた。しかし、炭化ホウ素などのホウ素系熱電材料は、「脆く」「焼き固まりにくい」という特性があり、実用的なサイズの部材を作製するには、2000度近い高温で焼き固めなければならないという問題があった。

 こうした中、今回、放電プラズマ焼結法という新技術を利用するとともに、原料粉末に重量比で10~15%の金属を混ぜることにより、炭化ホウ素部材の焼結温度を約1700℃まで下げることに成功した。加えて、この手法で合成した新素材は、金属が混ざったことで電気伝導度が約1.5倍に高まっており、熱電材料として優れた性質を示した。

 ホウ素系の熱電素子が完成すれば、従来の熱電材料よりも軽量で硬いという特徴を活かし、自動車エンジンや工場の熱機関等にも適用範囲の拡大が期待できるとしている。

参考:【東京都市大学】車の廃熱を電気に変換可能な新素材を開発

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