新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、竹中工務店、中央大学と共同で、世界で初めて土砂の搬送が可能なぜん動ポンプを開発し、試験機を完成させた。試作機の設計・製作は中央大学発ベンチャー企業ソラリスが実施。
ぜん動ポンプは腸のぜん動運動を機械的に模倣している。加圧機構を経路上に分散配置し、対象物を外部から遮断して搬送するため、エネルギー損失が小さく、持ち上げられる高さに理論上の限界がない。従来のぜん動ポンプは、流動性の高い液体・粘体やスラリー(液体と固体粒子との懸濁液)への適用はあったが、流動性が低い土砂への適用はなかった。
ぜん動ポンプによる搬送には、土砂によって異なる搬送抵抗の緩和が課題。そこで、土砂の粒子の性状・含水比・搬送特性の関係を分析し、土砂の締め固まりによる搬送抵抗の緩和のためゴムチューブの形状を工夫し、搬送経路上に含水比の調整機構を設けることで土砂の搬送を可能にした。
また、土砂搬送ぜん動ポンプは小型機と大型機(直径2倍)を製作。大型機はスケール効果と容量増加の相乗効果で小型機の8倍以上の容積土砂を搬送できる。また、大型機には簡素化・省力化を施し、フレームの目詰まり防止、人工筋肉とゴムチューブの耐久性を考慮した再設計など、建設現場での運用を見据えた各種改良を行った。さらに、ぜん動ポンプの制御プログラムとインターフェースも開発し柔軟な動作が制御可能になった。
今後、試運転から検証・実験を実施してポンプ内部のセンシングとそれに連動した自動制御システムの開発による搬送効率の向上を目指す。将来的に大深度・海底や月面などの極限環境での掘削・運搬作業への適用が期待されるという。
今回の試作機は、2019年12月18日から21日まで東京ビッグサイトで開催される「2019国際ロボット展」の中央大学ブースで実物を見ることができる。
論文情報:【国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構】世界初、土砂搬送が可能なぜん動ポンプの試験機を完成―腸の動きを模倣した機械を大深度・極限環境での掘削作業に適用へ―