千葉大学の市井和仁教授が参画する国際共同研究チームは、動植物の減少につながる間接的な要因に対処するため、緊急に科学者たちが介入すべき点を数値データに基づいて特定し、各領域の専門家による最新の知見を追加した。この成果は、科学誌「サイエンス」に「総説」として掲載された。
2012年、生物多様性の損失を食い止めるため、国連加盟国の政府間組織として「政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)」が設立。2019年5月、IPBESは次の10年に向けて各国政府が合意するための交渉基盤となる「全球評価報告書」を出版した。今回、研究チームは、IPBES全球評価報告書を最新のデータによって整理し直し、科学者コミュニティ向けに解説論文としてまとめた。
それによると、現在、ネコ科の大型動物、大型のサメ、霊長類、造礁サンゴ、木本植物などの大型種・成長の遅い種・生息地が限定される種・肉食動物の多くが急速に減少。また、これまで陸域約70%と海洋環境66%が人類により大幅に変貌し、湿地の85%以上が失われ、このような野生種数の減少と生物の生息域の縮小が、生態系の健全性の喪失・地域生態系の独自性の衰退・在来種数の減少を招き、今後数十年では百万種の動植物が絶滅のリスクを負うという。
一方、1970年代以来、一人当たりの消費は45%増加し、世界の経済活動は300%以上、世界の貿易は約900%増加。しかし、世界経済の拡大と自然の衰退がもたらす利益の分配は不平等であり、持続可能な開発目標(SDGs)のうち80%の達成が危ういと指摘している。
研究チームは、これらの危機的状況を食い止めるために、個々の社会でこれまで取り組まれてきた対策に加え、国際的に強く連携した行動が求められると結論づけている。
論文情報:【Science】Pervasive human-driven decline of life on Earth points to the need fortransformative change