中部大学の大場裕一教授は名古屋大学と共同で、魚類で初めて、ルシフェラーゼの由来の解明に成功。キンメモドキが餌であるウミホタルから酵素を獲得して発光していることを明らかにした。
生物発光はバクテリアから脊椎動物まで広くみられる形質で、生命の歴史の中で、何度も独立に進化してきた。発光反応は一般に「ルシフェラーゼ」と総称される酵素タンパク質と「ルシフェリン」と総称される化学物質による生化学反応だ。発光生物群は起源が異なるそれぞれ独自のルシフェラーゼを進化させてきたとされる。しかし、発光する魚類の中で、ルシフェラーゼの正体が解明された例はこれまでにない。
今回の研究で、発光魚キンメモドキのルシフェラーゼのアミノ酸配列を解析したところ、発光する甲殻類のトガリウミホタルのルシフェラーゼと同一であった。さらに、ウミホタルを与えずに長期間飼育するとキンメモドキは発光能力を失い、その後、ウミホタルを餌として与えるとそのルシフェラーゼを体内に取り込み発光能力を回復させることが分かった。
酵素はタンパク質でできおり、通常は食物として体内に入ると消化器官で分解され、本来の機能は失われる。しかし、キンメモドキはウミホタルを捕食し、未知の仕組みにより、ルシフェラーゼを消化せずに細胞に取り込み本来の機能(発光)の用途に使用していた。
今回「盗タンパク質」と命名されたこの現象は、発光に限らず全ての生命現象を含めて世界で初めての研究成果だ。この現象が生物界に普遍的に存在する可能性やその進化的・遺伝的仕組みの解明が期待される。さらには、タンパク質性医薬品の経口投与方法の開発など様々な応用展開も予想される。