北海道大学の脇田大輝氏(博士課程)らの研究グループ(他に京都大学)は、クモヒトデの逃避行動に着目し、放射相称の身体をもつ動物が前後左右を決めるからくりを解き明かした。全方位移動ロボット設計への応用が期待される。
クモヒトデの一種である 「Ophiactis brachyaspis」 は星形の身体をもち、その腕の数には4~7本といった個体差がある。一般的な5本腕のクモヒトデの歩き方はこれまでにも研究され、腕を失った個体が移動するときの腕の使い方も観察されてきた。しかし、無傷でありながら 5 本以外の腕数をもつ個体の歩き方についての報告例はなかった。研究グループは、「なぜ肢の数が違っても大丈夫なのか?」「前後左右のない動物がどのように『前』を決めるのか?」という疑問の解明に取り組んだ。
研究グループは、クモヒトデの腕の先端に触って逃避行動を誘発し、腕の数の異なる個体がそれぞれどのように腕を使って移動するのかを調べた。その結果、クモヒトデは触られた腕から左回りまたは右回りに「2つ隣」の腕の方向へ逃げる傾向があること、また、そのときに先頭になる腕の両隣の腕を同時に動かして漕ぐ傾向があることを、数理モデルを使って明らかにした。
今回の研究では 、刺激された腕から左回りか右回りにたどったときに各腕が何番目に隣り合うかが重要であり、腕が全体で何本あっても、個体の動きには大きな問題が生じない仕組みであることが分かった。この成果を、例えば「クモヒトデ型移動ロボット」に応用できれば、起伏が激しく環境に応じた巧みな方向転換が必要とされる場所で優れたパフォーマンスを発揮すると考えられ、災害現場や宇宙環境での活躍が期待されるとしている。