麻布大学は、生殖サイクルにおける哺乳類に共通した精子形成過程、及び受精・着床の分子機構を解明し、不妊症の原因を究明に貢献する研究プロジェクトを推進する。獣医系大学でも例のない先進的な研究として、今後の展開が期待される。
今回のプロジェクトは文部科学省私立大学研究ブランディング事業「動物共生科学の創生による、ヒト健康社会の実現」のひとつ。麻布大学獣医学部 動物応用科学科において、代表者を前澤 創講師(比較毒性学研究室)に、メンバーを伊藤 潤哉准教授(動物繁殖学研究室)として「生殖サイクルをつかさどるヒト動物共進化メカニズムの解明」をテーマに研究を行う。
生殖サイクルを支える分子機構の解明は、生命科学において本質的かつ重要な課題である。生殖細胞が、性分化、配偶子形成、受精を経て生命に連続性が生まれるこのサイクルは哺乳類に共通であり、共通に進化した分子機構が存在している。
不妊症はヒトと動物に共通した社会問題であり、不妊の原因は、女性由来(排卵や着床の異常) 65%に対して、男性由来(造成能力の異常) 48%とされる。受胎率の低さは環境などの外的要因や、遺伝などの内的要因が関係しており、不妊症には、受精・着床の分子機構の解明が求められている。
今回の研究では不妊症の改善を目指し、1)精子形成に機能するエピゲノム変化の解明、2)生体外精子形成技術の開発、3) 亜鉛シグナルの受精・着床における機能の解析に取り組む。成果として、1)不妊症の原因究明、2)生殖技術・治療法の開発、3)新規の家畜育種マーカーの開発などが期待される。