北海道大学の研究グループは、軟骨細胞に存在する「炎症アンプ」が関節炎の発症に関与することを明らかにした。
関節が炎症を起こし、そののち変形をきたす「関節リウマチ」や、慢性炎症を伴い、軟骨の破壊や変化を起こす「変形性関節症」は、治療法が進歩した今でも依然として難治例が存在し、完治が困難な疾患となっている。
そこで本研究では、これまであまり着目されてこなかった軟骨細胞に注目した。本研究者らは先行研究で、慢性炎症を引き起こすメカニズム「炎症アンプ」を報告しており、軟骨細胞に炎症アンプが存在し、関節炎の発症に関与しているとみて、研究を行ったという。
その結果、関節リウマチ、変形性関節症の軟骨細胞に炎症アンプの機構が存在することが明らかとなった。炎症アンプでは、転写因子であるNF-κBとSTAT3が同時に活性化し、種々の炎症性サイトカインやケモカイン、増殖因子などが大量に産生されることで、免疫細胞が局所に集積して炎症が誘導される。軟骨細胞においても、炎症アンプの活性化の指標であるNF-κBとSTAT3の活性化が認められた。また、軟骨細胞の炎症アンプを特異的に抑制すると、関節炎モデルマウスの関節炎が抑制されることもわかった。
さらに、炎症アンプ関連遺伝子の一つとして同定されていたTMEM147が、関節炎症の軟骨細胞に強く発現していることも見出された。軟骨細胞株においてTMEM147を過剰発現させると、炎症アンプのNF-κB経路が増強されたことから、TMEM147が炎症アンプを正に制御していることが明らかとなった。
反対に、TMEM147遺伝子を抑制したり抗TMEM147抗体を添加すると、炎症アンプの活性化が抑制され、関節炎も有意に抑制されることがわかったといい、抗TMEM147抗体が関節炎モデルに対して治療効果を持つ可能性も示された。
本成果は、関節リウマチ、変形性関節症の新規治療法開発に貢献することが期待される。