北海道大学のシャロン・ハンリー特任講師、オーストラリアのニューサウスウェールズ州がん評議会(CancerCouncilNewSouthWales)のカレン・カンフィル教授らの研究グループは、日本での子宮頸がん予防HPVワクチンの「積極的勧奨の中止」による影響を分析。積極的勧奨の再開などの諸政策の実施により子宮頸がんの超過的死亡数の80%が救命可能だが、検診率も上昇しないと根絶は難しいと推定した。

 日本では、HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンは2013年4月に予防接種法に基づき定期接種化されたが、接種後に痛みやけいれんなどの症状の訴えが相次ぎ、2ヶ月後にワクチン接種の積極的勧奨が中止された。その後、ワクチンと症状は無関係とする研究成果が多く出たが、現在も中止は継続中で、中止前に約70%あった接種率は1%未満まで減少。そこで、HPVワクチンの積極的勧奨の中止の影響を定量化する目的で研究が行われた。

 その結果、日本でのHPVワクチンの積極的勧奨の中止により1994年から2007年の間に生まれた女性だけでも、一生涯のうち24,600~27,300人が子宮頸がんに超過罹患し、5,000~5,700人が死亡すると予測された。また、今後50年間で、合わせて55,800~63,700人が罹患し、9,300~10,800人が死亡、さらに現在12歳の女性だけでも、一生涯のうち3,400人~3,800人が子宮頸がんとなり700人~800人が死亡すると推定した。

 一方、直ちに積極的勧奨が再開され、かつ9価ワクチンの承認により、12歳から20歳の女性の接種率を2020年中に50~70%に回復できた場合、子宮頸がんの超過的死亡数の80%の命を救えると推定。しかし、ワクチン接種率だけでなく検診受診率も上昇しない限り今世紀中の子宮頸がん根絶は困難と推定し、積極的勧奨の再開が期待されるとしている。

論文情報:【Lancet Public Health】Impact of HPV vaccine hesitancy on cervical cancer in Japan:a modelling study

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