東京都市大学では、建築都市デザイン学部建築学科の岩下剛教授と理工学部機械システム工学科の永野秀明准教授が、授業再開に向けた新型コロナウイルス感染症防止対策に役立てるべく、これまでの研究により得られた教室内の換気および飛沫拡散防止についての知見をまとめた。
岩下教授は、「感染」と「換気」の明確な関係は不明だが、CO2(二酸化炭素濃度)の測定値から、各教室の換気・通風の良好の目安を知ることができるとして、換気の徹底を訴えた。
通常、屋外空気中のCO2濃度は400~450ppm程度であり、窓や扉を開け放して通風の良い状態(教師1名、児童30名)では800ppm程度以下になることが多い。よって、CO2濃度の値をモニタリングしながら窓開けや扉開けを行うことが望ましいとしている。
また、今後、季節が進むことで頻繁な降雨や気温の上昇が予見され、常時の窓開けが困難な場合も天候によって適宜調整を行いながら屋外のCO2濃度に近づけることが望ましいとした。
永野准教授らは、流体解析による換気効率と飛沫の拡散について評価。その結果、くしゃみや咳はもちろん、ただ言葉を発するだけでも多くの唾液が飛散していること、密閉空間では飛沫は室内に長く留まり、感染リスクが高まることを確認した。また、環境中に存在する菌類やウイルスのゲノム解析を行った結果、手のひら表面に存在する菌類は、一度物体の表面に触れただけで移動することが確認された。
このことから、ドアの把手や机の表面、食堂の食券機や食器類、テーブルなど、不特定多数の人間が多く触れる場所について、「触れないように工夫する」や「頻繁に殺菌する」など、厚生労働省等が示す対策の有効性を裏付けた。
東京都市大学では、この提言を学内のみならず、世田谷区内と長野県塩尻市にある付属校をはじめとする学校等へも共有し、感染予防に向けた取り組みの強化につなげる。