海洋研究開発機構の中村武史技術研究員らは岡山大学、東京工業大学、福井大学と共同で地震・津波観測監視システム「DONET」の海底強震計データの測定とスパコン「京」による解析を行い、中規模地震によって深海底の広い範囲で長周期地震動が発生していることを発見しました。

 大規模地震発生時には建物の揺れが長周期地震動によってどんどん増幅されることが確認されています。陸地では盆地や平野において多くの例が報告されていますが、海底ではシミュレーション結果から同様のことが起こっている可能性が指摘されているのみでした。海底の震動であっても揺れが陸地まで及ぶ可能性があます。これは緊急地震速報などの地震動予測にも影響する恐れが指摘されています。こうした予測の質を高めるためにも海底の長周期地震動の特徴を明らかにすることが求められています。地震・津波観測監視システム「DONET」は南海トラフ周辺の海底での長周期地震動を解析するために2010年より稼働しています。

 今回の研究では「DONET」がとらえた2013年4月13日に発生した淡路島を震源とする中規模地震発生時の長周期地震動データを解析しました。一般的な地震は震源から離れると揺れは弱くなるのに対し、三重県沖など観測点は震源から離れているにも関わらず揺れが増幅されていることを突き止めました。また陸上と比べて揺れが継続する時間が非常に長いことも分りました。さらにスーパーコンピュータ「京」を用いた解析によって、こうした揺れの原因が海底の堆積層であることが明らかになりました。こうした事実はこれまでにも間接的なデータから指摘されていましたが、今回の研究で直接証明されたことになります。

 この結果は地震発生直後の震源地や規模の特定のための新たな知見となるでしょう。また、グループは今後も将来的な防災・減災に向けて長周期地震動の発生過程や海底堆積層の構造についてより詳しく調査を行っていくとしています。

大学ジャーナルオンライン編集部

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