玉川大学脳科学研究所と神戸大学のグループは、「身体機能が高いと認知機能も高い」という関係に関与する脳の働きを明らかにした。
これまでの研究で、身体機能が高い人は認知機能も高く、また、運動に伴う身体機能の向上は認知機能を高めることが示されてきた。しかし、身体機能のどのような能力が認知機能と関係しているのか?身体機能の高い人がどのような脳の働きで認知機能を高めているのか?ということについてはよくわかっていなかった。
そこで本研究では、複数の身体機能(有酸素性の持久力、歩行速度、手指の巧緻性、筋力)と、短期記憶に関する認知機能であるワーキングメモリーの関係を分析するとともに、その関係の背景にある脳の働きを機能的磁気共鳴画像法を用いて同定することを試みた。
米国Human Connectome Projectのデータベースに登録されている1033名のデータを用いて、各身体機能とワーキングメモリー課題の成績および課題時の脳活動の関係を分析したところ、まず、各身体機能とワーキングメモリーの成績の関係としては、有酸素性の持久力および手指の巧緻性が優れている人はワーキングメモリーの成績も優れていることが示された。これを仲介する脳活動としては、一部の前頭-頭頂ネットワークの活動が共通して上昇しており、さらに、持久力が高い人では、より広範な前頭-頭頂ネットワークの活動を上昇させていた。
一方で、手指の巧緻性が高い人は、デフォルトモードネットワークの活動を低下させてこれらネットワーク間の関係をうまく調節することで、ワーキングメモリー課題の成績を向上させているとわかった。
以上の結果から、有酸素性の持久力と手指の巧緻性を高めるような運動は、認知機能に有効に働く可能性があることが示唆された。認知機能の維持・増進に向けた、効果的な運動処方の構築等にも貢献が期待される成果だといえる。