北海道大学の村上正晃教授らの免疫と重力の関連を調べる研究テーマが宇宙航空研究開発機構(JAXA)の平成27年度の国際宇宙ステーションの実験棟「きぼう」を利用した研究テーマの一環として採択されました。重力の刺激によって炎症反応が起こるゲートウェイ反射が起こるメカニズムを解明される見通しです。
私たちは常に重力を受けて暮らしていますが、重力が健康や病気に与える影響、あるいは重力が無くなるとどのような異常をきたすのかを調べた研究は例が少ないのが現状です。しかしながらこうした影響を明らかにすることは宇宙飛行士の健康状態を適切に管理する上で重要です。村上教授らはこれまでのマウスを用いた研究で、重力がふくらはぎにある筋肉の感覚神経を刺激することで交感神経を活性化することを突き止めていました。このことが引き金となって腰髄に血液が流れ込むゲートが形成され、過剰な炎症を引き起こすのです。また人為的な電気刺激によってゲートの形成位置を自在に動かすことができることも発見し、これをゲートウェイ反射と名付けました。
今回の研究で、「きぼう」という微小重力状態ではこうしたゲートウェイ反射がどうなるかを検証します。宇宙で実験を行うのは重力が関係しているため、地球上では正確な検証を行うことが困難なためです。この研究によってゲートウェイ反射のメカニズムが完全に解明され、炎症反応における重力の重要性が証明されることが期待されています。全容が明らかになれば宇宙飛行士の健康管理に役立てられます。また、地上でも様々な炎症反応をコントロールすることができることが期待できます。JAXAは2年以内に宇宙実験の実現性のめどを立てる予定だとしています。