筑波大学の高木英樹教授、東京工業大学の中島求教授らの研究グループは最先端の流体計測技術を用いて、クロールの手の最適なかきかたとそのメカニズムを解析しました。S字ストロークとI字ストロークで推進力が生まれる仕組みに違いがあることが分かってきました。

 これまで競泳において日本は多くのメダルを獲得してきました。しかしなぜ体格やパワーで海外選手に劣る日本人が互角に戦うことができたのでしょうか。陸上では地面を強く蹴れば、体は同じ力で地面から前に押し出されます。これに対して水中ではどんなに強く水をかいても、かき方が悪ければ体が受ける力は非常に弱くなってしまいます。この水をかく技術に日本人が勝てる可能性が秘められています。では最も効率よく推進力を得られるかき方とはどのようなものなのでしょうか。特にクロールのS字ストロークとI字ストロークについては長年研究が続けられてきましたが未だに結論は出ていません。

 グループはこの謎に迫るために体格や筋力などの人体の特性、水の流れなどを考慮したシミュレーションによって最適泳法を調べました。その結果少ない筋力で効率よく推進力を得るにはS字ストロークが、速度を追求するならI字ストロークが適していることが明らかになりました。さらに水泳ロボットを用いて腕の周りの実際の水の流れを調べてみるとS字とI字では異なるメカニズムで推進力が生まれることが分かりました。単純な動きのI字では直線的な手の動きが前方への大きな水力を生むのに対して、S字では手の進行方向が変わる時に瞬間的に斜めの大きな力を受けていたのです。

 今回の研究結果によると最適な泳法は泳ぐ距離によって大きく変わってくるようです。また詳細なフォームは個人の筋力、持久力、体格によって微妙に異なってくると考えられます。今後は個人差を考慮したうえで最適泳法を割り出すことを目指して研究を進めていくしています。

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