東京大学の木下綾華博士課程3年生らの研究グループは、1枚の子葉を無限に成長させ、その葉だけで一生を過ごすモノフィレア属の植物において、遺伝子が働く場所を特定する実験手法を確立。細胞分裂を支える遺伝子が、通常の植物とは異なる場所で働くことを発見した。
種子植物では、組織の細胞が無限に分裂し続け、新しい葉や茎などの新しい器官(シュート)を作り続けるが、葉は細胞分裂が一定期間で止まり、決まった大きさにしか成長できない。しかし、一葉植物と呼ばれる、イワタバコ科のモノフィレア属の植物(モノフィレア)は、発芽して子葉が種子から現れた後、花をつけるまでは新しい器官を作らず、片方の子葉の細胞が無限に分裂して、子葉が無限に成長し続ける。この不思議な成長様式の解明に適用できる実験手法が少なく、遺伝子レベルでの研究はほとんどなかった。
研究グループは、遺伝子がどの細胞で働くかを明らかにする手法(ホールマウントin situハイブリダイゼーション法)を検討し、モノフィレアに適用できる条件を確立した。この方法は比較的手間が少なく、立体的な情報を保ったまま観察できる。これにより、通常の植物とは異なる場所、すなわち、子葉の基部にある、茎頂分裂組織に相当するとされる組織で、細胞分裂制御の鍵となる遺伝子が働くことを発見した。
この発見は、モノフィレアの子葉の無限成長性や新しく器官を作らないという特徴を支えるメカニズムの解明の一端となるのみならず、今後、種子植物一般の葉がなぜ成長を止めるのか、シュートを作り続けることができるのか、という謎に迫る一助となると期待される。