新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛の呼びかけで、知事や専門家らより現場の医師の話が大きな効果をもたらすことが、東京大学医学部付属病院の奥原剛准教授らの調査で分かった。奥原准教授らは医療崩壊で治療できなくなる危機や医療従事者の使命感が国民の心に響いたとみている。
調査は新型コロナの緊急事態宣言が出ていた5月、調査会社のモニターに登録している18歳から69歳の1,980人を対象に実施。参加者を①知事②専門家③現場の医師④患者⑤住民のメッセージを読む5つのグループに無作為に分け、「新型コロナで買い物に時間を減らそうと思うか」など3つを質問、「絶対にしない」から「絶対にする」までの6段階で解答してもらって平均値を算出した。
それによると、特別警戒地区に指定されていた13都道府県の参加者1,247人では、医療従事者の使命を伝える現場の医師の声が他のメッセージより外出自粛を促す効果が高いことが分かった。この傾向は特別警戒地区以外を含む全国データでも変わらなかった。
知事や専門家のメッセージが主に人の理性に向け、知識や指示を与えているのに対し、現場の医師の声は医療崩壊への危機感と医療従事者としての使命感で人の感情に訴えている。奥原准教授らは感情に訴える情報が深く記憶に残り、行動を促すのではないかとみている。