植物成分のヒノキチオールで肺炎球菌(耐性菌を含む)による肺炎を治療できることを、新潟大学の研究グループがマウスモデルを用いて明らかにした。
新型コロナウイルス感染症を除いても、肺炎は日本人の死因の第3位であり、肺炎による毎年の国内死者は10万人を超えている。その一因として、抗生物質の頻用により、薬剤耐性肺炎球菌が年々増加していることがあげられる。
本研究グループは、先行研究で、新潟県佐渡市の木である「アテビ(ヒバ・ヒノキアスナロ)」などの植物から採取される成分ヒノキチオールが、試験管内で薬剤耐性菌を含む肺炎球菌を殺菌することを報告した。今回は、マウスを用いた生体の肺炎モデルにおいてもヒノキチオールが肺炎球菌を殺菌しうるのか、さらには肺炎の治療効果があるのかを検証したという。
はじめに、肺炎球菌感染マウスにヒノキチオールを投与し、生体内での殺菌作用を調べた。その結果、マウス肺胞中の肺炎球菌(耐性菌を含む)はヒノキチオール投与により約80%の減少が認められ、ヒノキチオールによる殺菌作用が示された。
続いて、肺炎球菌の感染時に免疫細胞から漏出し、自己組織を傷つけてしまう酵素エラスターゼの分布観察と、炎症を誘発するサイトカインの濃度測定を行った。その結果、ヒノキチオールを投与したマウスでは、エラスターゼの細胞外への漏れの抑制が認められたとともに、漏れたエラスターゼの活性が約90%減少することが定量された。また、肺炎球菌感染に伴う炎症性サイトカインの産生は適切に抑制されていた。すなわち、ヒノキチオールは肺組織の傷害と過大な炎症を抑制する作用を持つことが示唆された。
以上により、ヒノキチオールは生体内でも耐性菌を含む肺炎球菌を殺菌し、肺炎の治療効果も発揮することが明らかとなった。この成果は、新型コロナウイルス感染症を含む広範な肺炎治療へと展開が期待される。