大阪市立大学大学院医学研究科脳神経科学の富山貴美准教授らのグループは、金沢大学、富山大学、米国ノースウェスタン大学と共同で、既存医薬品であるリファンピシンに認知症を予防する広い作用があることを世界で初めて突き止めたと発表しました。

 認知症にはアルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症などがあり、原因タンパク質とされるのは、それぞれアミロイド β(Aβ)、タウ、α シヌクレインです。これらのタンパク質が脳内で数分子~数十分子からなる小さな会合体(オリゴマー)を形成し、神経細胞の機能障害により認知症が発症するとされます。Aβを除去する治療薬の開発は数多いもののいずれも有効性は未確認です。発症後には多くの神経細胞が死滅するため、最近では発症前の予防が重視されています。

 リファンピシンは結核やハンセン病などの治療に長年使われてきた抗生物質で、同薬を服用していたハンセン病患者に認知症が少ないという報告があります。1994年に富山准教授がAβ凝集に対する同薬の抑制作用の存在を確認しています。

 今回、リファンピシンの作用を試験管内で検討し、Aβ、タウ、α シヌクレインのオリゴマー形成を抑える作用があることを発見しました。さらに、同薬の内服による効果を調べるため、アルツハイマー病や前頭側頭型認知症のモデルマウスに1カ月間経口投与しました。その結果、いずれの場合でも脳のオリゴマーが減少し、シナプスが回復して、記憶障害の改善が確認されました。

 脳内でのAβの凝集から認知症発症まで20年以上かかるとされ、予防薬の服用は長期になると考えられます。リファンピシンは安価で内服可能であり、副作用に関する情報も蓄積されています。今後、臨床試験でヒトに対する予防効果が確認され、副作用の問題がクリアできれば、安全で有効な認知症予防薬として有望であるとしています。

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