福岡工業大学情報通信工学科の石田智行准教授(石田研究室)は、小型のコンピュータ端末「BLEビーコン」を用いて、避難所運営をデジタルで効率化する新システムを開発した。
10年前の東日本大震災の発生時、発生から1週間で設置された避難所は2000以上に上り、自治体やボランティアの人的資源も限られる中で避難所の運営は困難を迫られた。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、今後の災害発生時には避難所の収容人数の大幅な見直しと分散避難が必要になるなど、新たな課題も生じている。
こうした課題を解決すべく、今回、石田研究室が開発したのは、小型のコンピュータ端末「BLEビーコン」を用いて避難所に出入りする人の数や性別、住所などの情報をタッチレスで送受信し、集計するシステム。
平常時にアプリに自分の情報を登録し、被災時に避難所へ行った際、「BLEビーコン」の半径10m以内に立ち入ると、ビーコンが自動的に被災者とメッセージのやり取りを行い、出入りを記録。「今その避難所にいる人数」をリアルタイムで集計できる。ビーコンに登録された情報は、自治体の管理画面に集約され、物資の配分などを判断する材料になる。また、民間の施設を臨時で避難所にする場合も、ビーコンとシステムがあれば情報の把握を行うことが可能。退出する場合に次の行き先を登録すれば、その後の支援の漏れも無くすことができる。
さらに、このシステムはこれまでに自治体が過去の災害時にどのような対応をしてきたかをAIが分析。過去の同規模の災害時を振り返って、その自治体や避難所にとって最適な物資や人員の配分を自動的に判断する。これにより、迅速かつ過不足のない物資や人員の配置ができ、災害支援を速やかに行うことができる。各自治体にある過去の災害対応のデータをAIの学習材料として共有できれば、より精密な予測も実現可能となる。