帝京大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究グループは、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士の鼻腔・のど・唾液中に含まれるカビや酵母などの真菌を出発前・滞在中・帰還後に調査し、宇宙滞在中は真菌の種類と数が大きく減少することを明らかにした。
有人宇宙環境では外的環境による影響がほとんどない。また、重力がないため真菌の胞子などは付着した粒子とともに空中に漂い、飛行士の皮膚(特に上半身)への付着、肺への吸引量の増加の可能性がある。そこで今回、宇宙飛行士による真菌の吸引の状況を調べた。
国際宇宙ステーションに滞在した宇宙飛行士のうち、2週間の滞在者10人、半年間の滞在者10人、1年間の滞在者1人の合計21人の鼻腔・のど検体・唾液サンプルを出発前・滞在中・帰還後にそれぞれ採取した。
採取したサンプルから見つかった真菌は、地上滞在時の43属120株からISS滞在中に4属18株へと変化。2週間滞在者、半年間滞在者ともに出発前は10人中8人から環境真菌が分離されたが、種数・株数ともに真菌数が出発前よりも有意に減少した。1年滞在者から滞在中に分離されたのは糸状菌と酵母の1株ずつのみ。ISS内の清浄な空気環境が影響した可能性がある。
また、半年間滞在者は1ヶ月以上の期間をおいて滞在中2回目を採取すると菌が減少していた。2週間滞在者は地上への帰還後に出発前の菌種・菌株数に戻った。ISSでの滞在期間、地上での真菌暴露時間、地上帰還後の環境の違いなどが真菌の推移に影響した可能性が考えられる。
今回、宇宙飛行士の健康に直ちに影響する菌株はなかったが、アレルギーなどに関係する菌も含まれるため、今後も継続した調査が必要としている。