広島大学の三浦郁夫准教授らの国際共同チーム(台湾、オーストラリア、ドイツ、ブラジル、タイ)は、台湾で6本の性染色体を持つカエルを発見した。性染色体進化の解明につながることが期待される。
生物は通常、2本の性染色体を持つ。まれに、性染色体と他の染色体(常染色体)が融合して、複数の性染色体からなる複合型性染色体を形成するが、その進化学的理由は不明だ。41年前、福岡教育大学の倉本満博士が台湾に生息するスインホーハナサキガエルを調べ、カエルでは初めて複合型性染色体を発見した。そこで、今回、新しい解析法を用いてこのカエルの染色体を詳細に調査した。
その結果、オスがX染色体3本とY染色体3本、メスがX染色体6本を持つこと、また、それは3本の染色体が三つ巴式に融合して誕生したことが判明した。さらに、3本のうち、1本は鳥やカモノハシ(および魚)、もう1本はヒトなど真獣類の性決定遺伝子を併せ持つことも分かった。
カエルの場合は少なくとも性染色体が6種類あり、この6本を潜在的性染色体と呼ぶ。通常、1本が性染色体として機能する場合、他の5本は常染色体として控えているが、集団間の交雑や新しい集団の遺伝的分化が進むと、別の染色体が性染色体へと切り替わる。これを性染色体の「取り替え(ターンオーバー)」と呼ぶ。
本研究成果は、融合した染色体がいずれも潜在的性染色体であった。そのため融合染色体の選択はランダムではなく、必然的選択であった可能性を示す。これは、複合型性染色体誕生の進化学的理由としては新しい解釈であり、性染色体の進化(および取り替え)機構解明の糸口になるとしている。