慶應義塾大学の西原広史教授らの研究チームは、新型コロナウイルス肺炎の他者への感染性を判断する社会的PCR検査の考え方を提案。診断・治療目的ではなく、感染拡大防止と社会経済活動の両立を目指す。
医学的PCR検査(行政検査)は、新型コロナウイルス肺炎の診断・治療のために行われる。COVID-19ウイルスの存在を証明するため、特異遺伝子が陽性となるまでのサイクル数である「Ct値」について、検査系の限界値であるCt=40を検査閾値(しきい値)に設定して実施する。
社会的PCR検査は、感染性の判定を目的として他者のために実施するもの。感染拡大の可能性のあるウイルス量の保有状況を判断するため、多くの論文報告に基づきCt=35を検査閾値に設定。プール方式を採用して安価に大量のPCR検査を実施する。また、陽性・陰性結果に加え、Ct値から推測されるウイルス量を勘案して社会的活動の目安を示し、受検者の隔離や行動自粛の必要性を判りやすく説明する。
研究チームは、このコンセプトに則った検査方式「SocRtes」(ソクラテス)を考案。この方式では、個人がインターネットで検査を申込み、届いたキットを使って唾液を発送する。10検体プール方式でPCR検査が行われ、2~3日程度で検査結果がインターネット上で閲覧可能。薬局4店舗で、対面で問診や検査のフォローを行うサービスも4月12日から開始する予定。
本研究は、楽天株式会社、日本調剤株式会社、株式会社フィリップス・ジャパン、株式会社LSIメディエンス、三菱スペース・ソフトウエア株式会社が研究協力企業として参画。経済活動の活性化と感染抑制の両立を目指し、医療機関以外でも実施可能な簡便かつ安全性の高い検査法の確立を図るとしている。