2021年4月8日、日本学術会議は組織見直しに関する報告書案をまとめ、首相所管の現在の姿が「ナショナルアカデミー」としての機能を発揮するうえで望ましいと結論づけた。菅義偉首相が会員候補の任命を拒否したのを発端に組織のあり方を再検討していたもので、4月21日から始まる総会に諮り、最終決定する。

 報告書案によると、日本学術会議の組織は国の機関でありつつ、法律上の独立性が担保されたうえ、日本を代表する学術機関として公的な地位と権限を与えられ、国の予算措置で安定した財政基盤が確保されているなどとして、現行の形が日本学術会議としてその役割を果たすのにふさわしいと主張。「これを変える理由は見当たらない」とした。

 国から独立する場合は、政府の事業を分離、独立させた独立行政法人や、社会福祉法人、宗教団体などが対象となる公益法人は不適切と判断した。特別法で設立する特殊法人は検討の余地があるとしているが、相当な準備期間が必要で、新たな法整備、財政的な課題が生まれるとしている。

 このほか、海外に向けた情報発信の強化や会議内での意思形成プロセスの改革、会員選考プロセスの見直し、事務局機能の強化などを課題に掲げ、対応策を示している。

 菅義偉首相が2020年、会員候補の任命を拒否したのを発端に、政府と自民党は日本学術会議に対し、政府機関から独立した形態を検討するよう求めていた。今回の報告書案はそれに対する回答の意味を持ち、梶田隆章会長らが井上信治科学技術担当相に説明を済ませている。

参考:【日本学術会議】日本学術会議のより良い役割発揮に向けて(素案)(PDF)

大学ジャーナルオンライン編集部

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